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日本経済新聞(電子版) 2020/5/25

マグネシウム相場に自動車減産の影 反発に手応えなし

商品部 桝田大暉

アルミニウム合金の強度や耐食性を高めるレアメタル(希少金属)、マグネシウムの取引価格が小幅ながら反発した。主要な生産国である中国の減産がきっかけだ。新型コロナウイルスの感染拡大を背景にした強烈な下落基調は小休止となったが、自動車向けの需要環境は悪くなるばかり。マグネシウム相場の手応えのない上昇の先には暗い雲が依然として残っている。

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中国の減産規模は不十分との見方も(陝西省のマグネシウム工場)

中国産マグネシウムの対日価格(運賃込み)は5月中旬時点で1トン2020ドル前後と4月下旬につけた直近安値の1945ドル前後から4%上昇した。国内卸値も4月下旬につけた13年半ぶり安値の1キロ250円前後から反発し、一時255円前後まで上昇した。マグネシウム生産で世界全体の8割を占める中国の減産が反発をもたらした。

マグネシウムは、新型コロナの感染拡大による中国での物流の混乱で2月に相場が一時的に上昇した後、製造業の需要悪化で急ピッチの下落基調に突入した。モリブデンやインジウムなど他のレアメタルも同様の値動きをたどっているが、中でもマグネシウムは自動車産業の停滞に悩まされた。

製造業の一大拠点である中国では新型コロナの影響で春節(旧正月)の大型連休明けの工場の稼働再開が大幅に遅れた。自動車のピストンやハンドルなどに使うアルミ合金の需要が落ち込んだ結果、添加剤のマグネシウムの引き合いも悪化。マグネシウム相場は2月上旬の2350ドル前後から急落し、4月下旬には2割安の水準にまで落ち込んだ。

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相場の急落に直面した中国のマグネシウム生産者は軒並み採算割れに陥り、たまらず4月下旬から協調減産を開始。4月の減産規模は計14カ所で3460トン、生産量は前年比で5%弱減った。大手生産者による価格統制も行われたとみられ、マグネシウム相場はじわりと反発した。

ただ、市場では中国の減産規模は不十分との見方が強い。自動車向けの需要減退がより大きくなると予想されるためだ。

英調査会社IHSマークイットは4月末に2020年の世界自動車販売台数(中大型バス、トラックを除く)が前年比22%減の6960万台になると予測した。新型コロナの感染拡大を背景に主要市場の中華圏や北米、西欧で販売が落ち込む。3月下旬時点では同12%減の7879万7千台としており、10ポイントの下方修正となった。

日本のメーカーではトヨタ自動車が12日、21年3月期の世界販売台数が前期比15%減の890万台になるとの見通しを示した。8年ぶりに1000万台を下回る。国内の大手アルミ合金メーカーの幹部は「4月以降、自動車部品メーカーから受注が大きく減っており、しばらく需要の弱さが続く」と打ち明ける。

専門商社、タックトレーディング(東京都八王子市)の上島隆社長は「中国では4月にマグネシウム需要が10~20%減ったと予想しており、5%の減産はまだ不十分だ」とみる。 新型コロナの影響が和らいだ中国や欧米では経済活動が順次回復しているものの、自動車購入など個人消費はしばらく弱いままとされる。マグネシウム相場の先行きは依然として暗い。中国の減産規模が拡大するなどしない限り、相場は軟調な展開が長期化しそうだ。